企業防災とは、災害に備えて企業が取り組むべきアプローチのことです。企業防災は、従業員や設備の被害を最小限に抑える「防災」と、事業継続や早期復旧のための「事業継続(BCP)」という2つの観点から取り組みます。
これらの2つの要素は、共通する部分もあるため、両方進めるべき点です。災害対策する際には、両方の観点から企業防災ができているかチェックすると、漏れがない対策ができるでしょう。
さらに、企業防災には、以下の点も含まれています。
災害時に、企業が上記の点を果たすことが推進されているため、企業防災を考慮する必要があるのです。
日本において企業防災が必要な主な理由は、自然災害が多発するからです。日本はもともと災害が多い国ですが、近年自然災害が多くなっています。
中小企業庁のデータによると、自然災害の発生件数は変動を伴いながら増加傾向にあります。大雨の発生する件数が増えており、気候変動の影響によって水害が頻発することも懸念材料です。
従業員の生命の安全を確保することが、「労働契約法第5条」において企業の安全配慮義務として含められていることも、企業防災が必要な理由です。
企業の怠慢が認められると安全配慮義務違反とみなされる可能性はあるでしょう。働いている人の安全のためにも、企業防災を進める必要があります。
内閣府が調査した「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の概要によると、大企業の約7割、中堅企業の3割強がBCP対策を策定しています。
つまり大企業であれば企業防災の取り組みを行っている数が多いものの、中小企業になると対応を進めている数が少ないのが現状です。
多発する自然災害によって防災意識が高まっている企業は多いとしても、災害対策に必要な人材や時間を割けないことが理由の1つになるでしょう。
しかし災害が発生した場合でも被害を軽減させるため、また事業を早期回復させるためにも、企業防災を進めるべきなのです。場合によっては、自社だけでなく取引先などと連携して、企業防災に取り組むことは大切です。
企業防災を行うために、まずは災害リスクを把握しておくことが大切です。ハザードマップや内閣府が出している「国での被害想定」などを確認して、立地から予測できるリスクを洗い出しします。
立地条件からどのような被害が発生するのか、また必要とされる被害対策の優先順位を定められるでしょう。リスクが高いものから順番に企業防災の対策を実施します。
災害に備えることを防災と呼びますが、企業が防災対策をするための一般的な防災対策のフローをご紹介しましょう。
従業員や顧客の安全確保は、災害時の最優先事項となります。事前に避難場所を確認しておき、見やすいところに避難場所への経路を掲示すること、また防災設備の点検などが含まれるでしょう。
労働契約法で労働者の安全への配慮が義務付けられていることからも、安全確保が大切であることが分かります。従業員だけでなく、顧客がいる商業施設などでは顧客の安全確保も必要です。
自然災害によって二次災害が引き起こされることがあります。地震によって火災や津波が発生したり、大雨によって冠水や土砂崩れが発生することが想定されるでしょう。
建物への浸水や公共交通機関の停止などが予想されます。また、電気、水道、ガスなどのインフラも止まるでしょう。これらのリスクに対処しているかを考えておくなら、従業員の命を守るだけでなく、早期の業務回復につなげられます。
防災備蓄品を備えておき、どこにあるのか、どのように使用するのかという理解を深めることも大切です。災害が発生したときには、帰宅困難になるケースも考えられるため、災害備蓄品を使用して、社内に残る可能性もあるでしょう。
そのため、定期的に災害備蓄品の場所や中身についての周知を徹底することで、万が一必要なときにすぐに使用できるように備えておきます。
一般的にはライフラインが断絶された場合に、復旧に3日程度かかると予想されています。全従業員分の防災備蓄品を用意しておき、従業員への周知を徹底しましょう。
大地震が発生した場合には、自治体や自衛隊による支援が始まります。その際でも、支援が始まるまで時間がかかるケースもあります。
そのため、大企業であればあるほど、地域のために応急支援を行うことは地域貢献となるでしょう。従業員はもちろんのこと地域住民のために備蓄品や避難場所を提供したり、資材を提供したりできます。
災害時に備えて、普段から防災訓練に協力すること、防災備蓄倉庫設置場所を用意することなどもできるでしょう。
災害発生時においても事業継続するために、複数のジャンルの企業が防災対策を実施しています。実際に被災したときに、実施した取り組みが功を奏した例をご紹介しましょう。
新潟県中越地震で被災したスーパーマーケットでは、事前に事業継続の取り組みを行っていました。マニュアルの作成や被災時に需要が高い商品のリスト化などです。また、物流センターの設置や商品仕分け機への投資も行っていました。そのため2007年に新潟県中越沖地震の際には、被災した当日には4店舗、翌日には2店舗、さらに3日後には1店舗が営業を再開しました。
自動車用鋳造金型設計製作会社では、設備復旧などの手順のマニュアル化やノウハウをPCによる共有化などの事前対策をしていました。マニュアルを作成するだけでなく全社勉強会の毎月の実施や災害発生時の方針や対応手順を周知徹底する活動をしていました。そのため、2007年の新潟県中越沖地震発生時には、地震発生翌日に生産を開始して、1日遅れで出荷という早さを実現しました。
自動車の車両開発、生産会社の例では、リスク項目の評価や防災対策を実施していました。また衛星電話やTV会議システムを用いた訓練も行っていたため、岩手・宮城内陸地震が発災した際でも2時間後には本社に対策本部を設置し、6時間後には支援要員を派遣できました。早期対策できた結果として、2日後には通常操業を開始できるほどになりました。
1.マニュアルの作成
企業防災に必要な行動として、防災マニュアルの作成があります。災害が発生したときに、どのようなオペレーションで動くのか、災害時の組織や緊急連絡先などを記載しておきましょう。もちろん企業によっても必要な内容は異なるため、自社に必要な防災マニュアルにします。
2.備蓄品の準備
帰宅困難になったときに備えて、備蓄品を用意しておくことが必要です。従業員全員分の備蓄品が必要ですし、帰宅支援キットも用意しておくとよいでしょう。これらの備蓄品を備えておくだけでなく、定期的に場所や使い方を周知します。
外部の帰宅困難者のためにも、余分に備蓄品を用意しておきます。古くなって使えなくなったものは、入れ替えするようにしましょう。
3.防災訓練
定期的な防災訓練を実施することで、防災意識を高めたり、緊急時の行動を確認できます。地震や火災時の避難誘導の仕方や、初期消火のための訓練、さらにAEDの使い方や応急救護訓練なども学んでおくとよいでしょう。
防災訓練を実施すると、防災マニュアルに加えるべき点や変更すべき点が見つけ出せるでしょう。定期的に防災マニュアルも見直して、防災訓練に合わせたものにしていきます。
災害発生時に被害を最小限に抑え、事業継続のために備える必要もあります。従業員の安否確認のために、安否確認システムを導入することを検討できます。連絡がつきやすいビジネスチャットなどを利用するのもよいでしょう。
また、災害時にデータを守るためのバックアップシステムも構築します。停電などのリスクに備えて、データ消失のリスクに備えましょう。自社のシステムにあったバックアップシステムを構築し、データが確実に保管されるようにします。
事業継続には安否確認システムが不可欠です。事業を行うには働き手がいなければいけないからです。そのためにも従業員の安否確認を最優先で行いましょう。
災害発生時には電話で安否確認するのが難しいため、安否確認システムを活用するのはおすすめです。
その他にもビジネスチャットやグループチャットを確認するのも方法です。1つのシステムだけではサービスが停止した場合に安否確認できないため、複数のシステムの導入やビジネスチャットの活用方法を周知しましょう。
災害時にデータを保護するためにバックアップシステムを構築します。バックアップシステムにはデータ消失リスクを避けるために遠隔地バックアップシステムの導入を検討できるでしょう。
データやシステムを遠隔地で保管するので、被災の度合いによってデータが消失する可能性を低くできるからです。
災害で交通手段が利用できなくなる可能性に備えて、リモートワーク環境を整備しておきます。災害時だけでなく、平常時の作業効率化にもつなげられる方法です。
災害対策だけでなく、働き方の多様化にも対応できる方法として、リモートワーク環境の整備は効果的な方法です。
勤務先の企業防災が行われていないと働いている社員たちも、災害対策ができていないことから不安に感じるケースもあるようです。具体的には社内の備蓄品が不足していたり、災害時の行動マニュアルが整備されていないなどの例があります。
そのため意味のある企業防災を行うには、以下のポイントがあります。
さらに具体的に見ていきます。
災害の対応ルールが作られていないなら、災害発生時にどのように対応するのか社員がわからない事態になり得ます。
そのためルールを作ること、ルールを周知するという2つのステップを行います。
災害発生時には、出社するのか自宅待機するのかを最初に判断しなければいけません。
出社の基準となる点を定めておきましょう。
これらの条件を満たしているのであれば、出社できると判断可能です。もちろん企業によっては、基準をさらに明確にしておくこともできるでしょう。
災害時のマニュアルを作成したのであれば、どのようなルールがあるのか周知します。マニュアル作成の際は、社員が理解できる形式のテキストになるようにし、災害時でも携帯できるものがよいでしょう。
作成した対応ルールは、災害発生時の企業の連絡先とともに携帯できるカードにしておくとよいでしょう。場合によっては、自宅に保管できるものがおすすめです。
対応ルールを定めていたとしても、「災害発生時に読んでも分からない」という事態は避けたいものです。普段から行動マニュアルの確認を行い、社員が基準をよく理解できるようにしておきましょう。
そのために、社員が容易にマニュアルの内容を理解できるように作成し、サポートする必要があります。マニュアル整備する際には、以下の点を明確にしておき、考慮するとよいでしょう。
人命の安全確保が最優先されることを明確に記載しましょう。業務や被害の確認などもありますがまずは自分や家族の命の安全を確保します。
マニュアルは、災害発生時などパニックになった際にもわかりやすいものにしておきます。文章は短くし、要点をわかりやすく記載します。
災害発生時には企業の近隣住民との協力も忘れてはなりません。大規模な災害になるほど、協働できるかが被害の軽減や早期復旧に欠かせないでしょう。
災害対策のマニュアルは普段から携帯できる形式にしておくと、いざというときに使いやすくなります。たとえば、一般的なマニュアルの他にポケットマニュアルのように持ち運びしやすいものも用意しておき、各自が携帯しておくのもよいでしょう。停電時にも使えるように紙ベースのマニュアルを用意しておきます。
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※2021年6月25日時点、公式HPに活用事例が掲載されている企業の中から、それぞれ以下の基準で選定しました。
・BCP対策や非常用にオススメの電源:バッテリー内の保護回路の種類が一番多かったもの
・イベントなど長時間の使用にオススメの電源:バッテリー容量が一番大きかったもの
・日常的な用途にオススメの電源:重量が一番軽かったもの